2015年10月11日日曜日

Granada: Man and Superman (グラナダ「人と超人」) George Bernard Shaw: Life Force : Hombre y superhombre


「人と超人」(4幕)は作者 George Bernard Shaw 自身が「喜劇にして哲学」と銘打つごとく、劇の形を借りて 作者の思想を縦横に展開した作品であるため、かなり長くなっており、第3幕は独立して別に上演されることもよくあります。

宇宙に満ちる「生の力」---劇形式で展開する哲学的喜劇

Ann Whitefield (以下 Ann と表記します) は父を失って悲しみに沈んでいます。Ann が小さいころから親しくしている青年に John Tanner と Octavius Robinson がおります。Ann は早くから John Tanner = Jack Tanner を愛していたので、父が死ぬ前に父の親友 Roebuck Ramsden とともに Jack Tanner をも彼女 の後見人に指定してもらいました。昔気質の老人である Roebuck Ramsden は「革命家必携」というような本を書く進歩思想の持主の Jack Tanner を嫌っており、彼が連帯後見人になって いることには不満です。この老人は亡くなった Ann の父の意向もあって、彼女が Octavius Robinson と結婚 することを望んでいたし、芸術家肌の Octavius Robinson も Ann に対してロマンティックな愛をささげていましたが、Ann の心は常に Jack Tanner にありました。

一方、そんなことには少しも気付いていない Jack Tanner は Octavius Robinson に向って、Ann はわれわれ二人のうち 君の方を食おうとしているのであり、君はあの女獅子に半分呑み込まれたも同然だと言います。古米から女のあとを追うのは男だとされ伝説の Don Juan がその代表で ありましたが、Jack Tanner の考えでは、それはむしろ逆で、女の方が母性本能に駈り立てられて男を餌として追いまわすのだと説きます。

 Jack Tanner は、Octavius Robinson の妹がある事情から結婚 の公表を秘密にしておいて相手の男と関係し、身篭もったことが知れてみんなが大騒ぎをした時にも、女は全宇宙の意志に支配された存在であって、女の最高目的の完 成、つまり子どもをもうけて子孫を増やそうとしたのだ から、自分の本能に従ったのは正しいとし、母となることは女となる第一歩だといってのけます。Roebuck Ramsden は世間一般とは異なった考え方をする不埒者、悪党といって Jack Tanner を非難します。

熱烈な偶像破壊者であり伝統的な道徳を無視する新しい思想をもっている Jack Tanner は、精神的にも肉体的にも優れた雄弁家です。彼は女に縛られることから逃れて、世界に対する自分の使命を自覚し自分の意図する目的に向って前進する云わば超人なのです。

彼は、自分の運転手から、Ann の追っているのは Octavius Robinson ではなくて彼の方だと知らされ、Ann も積極的な態度に出るので大いに驚き、女から逃れるために英国を逃げ出し、海を渡ってヨーロッパ大陸へ行きますが、スペインの山中で山賊につかまってしまいます。

その夜 Jack Tanner も山賊も地獄の夢をみます。夢の中では Don Juan や悪魔などが登場して、夢幻的な劇中劇が 展開され、作者 George Bernard Shaw の女性観や恋愛観、人生観などが 思う存分に述べられて、一種の議論劇とも呼ぶべきもの となっています。やがて夜が明けるとAnn が自動車で追って来て Jack Tanner はついにつかまってしまいます。(これがよく独立 して上演される第3章です。)

Granada の別荘でみんなが落ち合ったとき、Octavius Robinson は Ann に結婚を申込みますが、彼女はそれを拒絶して、 あくまで自分の追っている Jack Tanner に迫ります。 Jack Tanner は Ann が夫を持たなければならないのが世界の意志である以上、自分はなんだか結婚させられそうで怖くてならないと言います。そして遺言状に Jack Tanner を後見人に指定してある のも実は Ann の意志だったと聞いて、彼を虜にする罠が最初からかけられていたことを知ります。Ann は子ども のころから二人のために「生の力」(Life Force)がその罠をかけたのだと言います。かくして超人 Jack Tanner も、逞しい女の「生の力」の虜になって結婚という自然 の罠の中に陥ってしまうのでありました。


George Bernard Shaw nació (1856)